ハリケーン
「ギア…選んで貰いたい…」



「はあ?何て言ってんのか聞こえないんですけど!」

千尋は水の出ているホースを右手に持ったまま、腰に両手を当てて真っすぐに少年を見た。



「…や、いつものおじさんは?」

「勇次の事?今日はいないよ。夕方までは帰って来ないけど?」

「じ、じゃあいいです…また来ますから…」

「ちょっと待ちなさいよ!あたしじゃ不満っての?」

言いながらホースの先を少年に向ける。



「うわっ!」

少年は千尋のその行動に驚き悲鳴に近い声をあげた。



「なーんだ、大きな声、出るじゃん」

ケラケラと笑いながら千尋は蛇口をさっきとは逆に捻り、水を止めた。



「で?ギアを選んで欲しいって?」

「…はい。今使っているクラッシックじゃ僕に合わなくて、それで」

「あんたクラッシック使ってんだ、ふーん…結構無謀ね?」

「…ですか?」

「ロングのギアにはゆったりとしたラインを描きながら、板の上を歩いたりするクラッシックスタイルと、ロングボードなんだけど、ショートみたいにガンガン波を刻んだりもできる、ハイパフォーマンススタイルの2つがあるけど、初めの1本にはハイパフォーマンススタイルがいいかもね。とりあえず波乗りの楽しさや感覚を覚えるには一番いいかなって思うけど?」




少年は千尋の説明に目を丸くして、

「ギア選び、手伝って貰えますか?」

今度は千尋を真っすぐに見て言った。








< 7 / 10 >

この作品をシェア

pagetop