ハリケーン
千尋は『SurfShop・波乗り屋』の裏口から回り込んで中に入ると、自動ドアのスイッチをオンにした。



「いらっしゃいませぇ」

ちょうど自動ドアの前に立っていた少年にセンサーは反応し、扉が開く。

千尋の招き入れで少年は店内に足を踏み入れると、真っ白い壁と、色鮮やかなサーフグッズの数々が目に飛び込んできた。





「あんた名前は?」

少年が店の一番奥の壁に架かっているクラッシックのロングボードに見とれている時に、千尋は不意に聞いた。

「…シュウヘイ…丘野秀平…です」

「ふーん、いくつ?」

「17…」

(げ、あたしとタメかよ)

秀平は千尋の質問に答えながらも壁のロングボードから目を外さずにいた。



「あの板、気に入った?」



「はい!とても綺麗なラインですね…」

「へえ…目は良いみたいね。でもあれは売り物じゃないから。例え1億出されても売らないと思うよ?ここのオーナーは」

「い、いや…僕なんかがあんな凄いボードには乗れませんから…」

「あれはね、リチャード・カリバンって世界一のボード職人がここのオーナーの為に造った一本なの。微妙に左右対称じゃないから他の人は乗れないと思うよ」

「はあ…」

「ギア選ぶんだっけ?」

「は、はい!」

「ハイパフォーマンスはこっち。来て」








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