恋するシンデレラ



皆に背を向けて優斗の元に駆け寄った私の頬を、一滴の涙が伝う。


「ふ。
よく泣くな。」


優しく拭ってくれる温かい手。


「・・・嬉しかったんだもん。」

「わかってるって。」


優しく笑ってくれる優斗。



今、独り占めしてるんだね。




「どっか行くか。」

「うん。」




まだ暑さの残る風を受けながら、ゆっくり歩く。












「それ、ずっと付けてろよ。」

「ん?」

「・・・バッジ。」





あぁ、これ・・・



「えっ?」



ずっと?


ずっと、って・・・



「・・・俺も、ずっと、付けとくから。」






まるで。


プロポーズされてるみたいで。




夕陽に照らされている優斗の頬が、更に赤く染まる。






ガラスの靴を見て。


優斗を見つめる。




「見んな、あほ。」



シンデレラのように。

ガラスの靴で繋がれる。




「見るわ、あほ。」


小さく言い返せば、極上の笑みが降ってくる。




あー、好き。


心の中で呟く。









「・・・なるべく、しないよーにするから。」

「え?」

「今だけ。」



ガラスの靴を握っていた手を掴まれて。




ーーーーーーーーーちゅ。




甘いキスが降りてきた。












これからも、ずっと。






私だけの王子様。







END
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