恋するシンデレラ









「大丈夫ですか?

西塔さん。」




先生より先に声を掛けたのは、神林さんだった。


あの時からは想像できないほどの優しい声で、心配そうに見つめられる。












今、私が彼女に言えば。


私が不利になる。




それをわかってて、彼女は行動をとっている。

むしろ、それを望んでいるのかもしれない。








「大丈夫です。

ありがとうございます。」



だから、私は。

出来る限りの笑顔で答えた。






「・・・・っ。」



神林さんは一瞬顔を強ばらせ、口角を無理矢理上げた。







「神林。」





いつもより低い声。





「優斗?」




私の声には反応せず、神林さんに近寄る。






「人を傷つけるのはやめろ。」





静まり返る教室。






「こいつは関係ないだろ?」




こんなに怒った優斗、初めて見た。



静かなのに、それが余計に怖い。







「急にどうしたの?

あ、西塔さんだからそんなに怒って・・「そういう問題じゃねーだろ!」







優斗が、初めて怒鳴った。


驚いているのは私だけじゃない。






「俺の答えが不満なんだったら、俺に言え。

人を平気で傷つけたりするな。」






静かに。



優しく。



優斗の声が響き渡った。








< 55 / 304 >

この作品をシェア

pagetop