恋するシンデレラ









優斗がいなくなって5日目。





達哉君とはすっかり仲良くなった。



さすがに、あの後は気まずかったんだけど。


達哉君がいつも通り接してくれてたから、芝居に支障が出ることもなかった。












自転車を止め、前かごからリュックを取り出す。







ブー・・・ブー・・・




携帯が鳴った。




ん?

また電話。


朝早く、しかも電話なんて。


最近電話多いなー。



携帯を開けると一番声を聞きたかったあいつから。


やった。

電話をくれるのはやっぱり嬉しい。





「もしもし。」


『おー。』



そっけない返事に思わず顔がほころんでしまう。



「どうしたの?」

『ん? イタ電。』

「はははっ。

会話してる時点で違うじゃん。」








歩きながら他愛もない話しをする。






まさかまた電話をくれるなんて思ってもみなかった。



スキップしたい気持ちを抑えて、昇降口へ向かう。







『練習、上手くいってんのか?』


「うん、順調だよ。

そっちは?」


『あー、今日は早く終わるらしい。』



優斗の声が聞こえると耳が熱くなって、くすぐったい。






勝手に拗ねていたはずなのに。

声を聴いてしまえば、そんな気持ちなんてわすれちゃってて。


早く会いたいな、なんて思っちゃう私はかなり重症なんだろうな。







そろそろ昇降口に着きそう。

基本的に、校内は携帯の使用が禁止されているから。


電話は切らなきゃいけない。





寂しくなってくる。


・・・切りたくないな。







「じゃあ、また・・・」



仕方なく電話を切ろうとした私は、思わず立ち止まった。






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