1Rの彼女*番外編*
実物を見て、思い出したという訳だった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「なんだよ、これ…。」


雑誌を持つ手が震える。

見出しのタイトル。
『女性が夢中になる癒しのカフェ』


記事を読んでいくうちに、鳥肌が立ってくる。

『女性が誰もが1度は憧れる“お姫様”。
ここ“メリーゴーランド”は、オフィス街にあるにもかかわらず、おとぎの国に迷い込んだような錯覚に陥らせる。

大きな1面の窓から差し込む光、オフホワイトのタイル、アンティークの家具と雑貨。

そんな空間にエスコートしてくれるのが、甘い笑顔が印象的な、ホールスタッフの三上拓馬くん。

コンセプトは、“終わらない夢空間”。限られた時間の中で、あなただけの夢のような一時を堪能してみては。

おすすめは、フルーツタルト。オーナーの気まぐれで作るため、1日8個の限定品。』




記事の内容は店のコトだからいい。
店の写真はひいき目で見なくても、よく撮れていると思う。
パスタランチもフルーツタルトも美味そうだ。

ありえないのは、俺の紹介文と俺の写真。
なんだよ、この胡散臭い俺の写真。
こんな顔見たら、癒されるもんも癒されなくなっちまうだろ…。


ふいに結子さんの顔が、俺の頭をよぎった。

この記事、絶対に見られるわけにはいかない…。
< 35 / 93 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop