ここにある幸せ【短編】
★★
冷たい手
着いた先は、秋斗の会社の近くにある大きな総合病院だった。
『あのっ、坂井…坂井秋斗は…』
『坂井さんですか?』
受付の事務員に声をかけたその時、院内にいた警察の人があたしに声をかけてきた。
『こちらです。事故の原因はトラックの運転手による前方不注意で…』
慌ただしく並べられていく言葉は、右から左に流れていく。
あたしは愛花と尚斗の手を両手で強く握りながら案内される場所へとただ歩いていた。
『ママー』
不思議そうにあたしを見上げる二人を見ながら、何かの間違いだと何度も何度も自分自身に言い聞かせていた。