ここにある幸せ【短編】
PM8:25。
『こちらです』
そう言われた部屋のドアを開けると、秋斗がベッドの上に眠っていた。
『パパーっ』
秋斗に気付いた愛花たちが、秋斗のそばに駆け寄っていく。
でも、いつものように秋斗が目をあけることはなかった。
秋斗は、あたしに電話をしてきたすぐ後に、会社の前の道路を横断中、わき見運転をしていたトラックに巻き込まれるようにしてはねられた。
救急車が到着した時には微かに息はあったのに、病院に運ばれた時にはもう息がなく、手の施しようがなかったと説明された。
それでも訳が分かっていない二人は、秋斗のそばではしゃいでて。
あたしはそんな二人の姿をもう見ていることができなかった。