最後の春
「かわいくなかったら？」

土田が聞き返した。

「そう、かわいくなかったらアンタはどうせ何もしないんでしょ？結局男って外見で決めるもんなのね」

私服の女の勢いが増す。

「それに君！」

女が裕を指差してきた。顔は明らかに不機嫌な様子だ

「俺？君？」
「そう、君だよ。君も男なら片思いの人に言わないと！」
「言わないとって言われても・・・」

何がなんだかわからないが説教を受けているのは確かだということは裕には理解できた。

「見ず知らずの人に何がわかるんだ？」

これぐらいしか裕には言い返す言葉が見つからない。いちいち長野との経緯を説明する義務もない、この人は状況をわかってないのだから。

「みっちゃん、そのへんにしとこうよ」

制服の女が「みっちゃん」をなだめる。しかし、その言葉は耳に届いてないのは明らかだった。そのとき「みっちゃん」は不思議な一言をつぶやいた。

「あーあ、やっと見つけたと思ったのに。君にはがっかりだ」
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表紙・目次

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