最後の春
「はい、泉です。…こんにちは。兄ですか?ちょっと待ってくださいね。兄~!長原さんから」

部屋に入ってくるなり優美は子機を裕に投げた。「ノックしろよ」と裕は注意したが優美は無視し部屋にあるマンガを読み始めた。部屋から出て行く気配はない。

「どした?」

裕は半分諦め電話に出てみると

「今一人なんだよ。どうやらウチもカラオケにでも行ってるようだ。もう飯食った?」
「いや、今からコンビにで調達しようかと思っていたところだ」
「タイミング良かった。どうやら俺が電話をすることを予想してたみたいで飯用意してあるんだけど来るか?」
「なるほど、だからウチの晩飯がないことを理解したよ」

裕は苦笑いすると机にあったノートに
「今から長原家にて晩飯」
と書き、優美に見せた。優美はそれを見ると自分の部屋に行った。

「じゃあ10分後に到着予定なのでよろしく」
「了解」

電話を切ると裕は部屋を出て優美の部屋の前で

「10分後到着予定なのでよろしく」
「はーい」

優美が部屋の向こうで返事をした。

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