最後の春

ふりまわす転校生

「マジで!?」

裕が光司との出来事を話すとクラスに響き渡るほど大きい声で土田が驚く。周りにいたやつらからの注目を浴びる形になってしまった裕は長原と土田を屋上に連れ出す。ここなら周りを気にせず話せる。

「夢ヶ咲かぁ。」

長原は空を眺めながら呟いた。長原が空を眺めている時は大抵考え事をしている時だということを裕はわかっていた。

「空眺めちゃってどうしたの長原ちゃん」

わかってない土田が長原が見つめている空へ顔を向ける。空には雲ひとつない快晴で上空では飛行機が飛んでいる

「わかった。GWの時に行ってみようぜ何かわかるかもしれないし。親父さんに長野さんのお父さんに久しぶりに会いたいから時間作れないかお前も頼んでみてくれ」
「わかった。頼んでみるが、出張でいくから仕事モードの親父だったらヤバイかも」

家にいる時の光司は自分が決めた流れからずれることを極端に嫌う。無論仕事の時になればその性格は当然のように強調されることは想像できる。

「少しぐらいの時間なら大丈夫じゃね?GW暇だから俺も行くぜ」

話を聞いていた土田も乗り気になっている。裕は帰宅してから繰り広げられる光司とのやり取りのことをシュミレーションしてみたが許可を得る自信はない。

「やってみなきゃわからねぇよ。とりあえず頑張れ」

察したのか長原が裕の肩をポンと叩いた。HRのチャイムが校内に鳴り響くそろそろ桜井が来るころだ。

「さぁ可愛い子だったらいいなぁ」

土田はまだ見ぬ転校生に期待している。裕たちは教室へと走って向かった。
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