最後の春
「ちょっと待って」

教室から出た宮田は先に歩いていた裕に声をかけると

「ン~~。疲れた!!!」

と背伸びをした。

「転校生の宿命とわかってても人集まりすぎ。」

宮田が裕に愚痴をこぼす。

「まぁ仕方ないよそれは」
「キミだって見てるだけで助けようとしてくれないのが悲しかったわ」
「いやいや、なぜ俺が助ける必要があるのか逆に教えてほしいぐらいだ。」
「優しくないなぁ」
「校内案内してるだけで十分優しいと思うのは俺だけですかな?」
「ハイハイ、優しいよキミはありがとうございます」

宮田は先ほどまでの態度から昨日のモッツァでの態度に戻ったような気がした。おそらくこちらの方が素に近いのだろう裕はあまりの違いになぜか笑ってしまった。

「何で笑ってるの?」
「いや、気にするなよ」
「ふーん、まぁいいや。とりあえず大体で良いから案内してよ」

宮田はそれ以上追及せずに裕の横を歩いていく。いつの間にか互いに敬語でなく普通に話せていたことに裕は気づいた。これも宮田の性格が為せることなのだろうか歩きながら裕と宮田は色々な話をした。すると話は部活動のことになった時。

「キミは部活やってるの?」
「いや、やりたい部活もないしバイトばっかでやってない」

部活動の参加について矢ケ崎高校では各自の自由選択になっている。運動系の部活が盛んだが裕にはあまり興味がない。

「やりたい部活って?」
「う~ん。特にこれ!っていうのは無いけど映画は好きだから映画見る部活があったらいいよね。まぁここには無いけど」

宮田は裕の言葉を聞くと突然。

「無いなら作ってしまえばいい!」

と言うとある部屋に入っていった。そこは職員室だった。
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