最後の春
矢ヶ崎駅に着くと大勢の人であふれていた。矢ヶ崎駅は複数の高校がある場所でバスの路線も充実している。大体どこの高校も行事日程は一緒なので今日からの始業式を控えた新入生と思われる生徒と父母でバス乗り場は長蛇の列が生まれていた。バスを待っていると何時になるのかわからないので裕と長原は歩いて行くことにした。

「裕、今日の予定は?」

昼食を買うためにコンビニに寄った長原が言った。時間に余裕があるときはコンビニによってから行くのが2人の日課となっている。

「今日はこれだ」

裕は昌子から貰った千円札を長原に見せた。これだけで優美を迎えにいくことが長原にはわかってもらえる。

「かわいい妹を持つ兄貴は大変だな」

長原はそういうと裕の肩をたたいた。小さい頃からの親友である長原は良く泊まりに来ている。優美も長原が泊まりに来るたびに嬉しそうな顔をしながらゲームに混ざったりするので仲がいい。裕には優美がかわいいと思ったことがないので長原の言葉は意外だった。
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