最後の春
「作る?」

裕は宮田が何を言ってるか理解できない。自分が伝えたいことが伝わってないことを察したのか

「作るんだよキミとわたしで映画部を。詳しいことは放課後決めよう」

というと、宮田は教室に戻っていった。裕はしばらく動くことができなかった。確かに映画は好きだし映画好きという理由で今のビデオ店でバイトすることも決めたが部がないなら作ろうと思ったことはなかった。

「映画部?泉ちゃん作るの?」

さすがの土田も宮田の行動に驚きを隠せない。

「いや、何がなんだかわかんないうちに今の流れになってる」
「どうすんの?」
「どうするって言われても…」

いきなりのことなので裕は答えることができない。

「やってみるのも面白いかもな」

ずっと黙っていた長原が言った。3人は長原の顔を見る次の言葉を待っているのだ。

「俺たちもう2年だろ?どうせ来年は受験とかで活動なんかできないし今しかできないことやってみるのも悪くない。」
「なるほどな。長原ちゃん良いこと言うわ。俺参加するぜ」

土田が長原に抱きつく。今しかできないこと。裕は考えてみたが確かに今は学校とバイトの生活でそれ以外何があるか?と言ったらコレというものがない。

「わかった。映画部を作ってみよう」

裕が言うと土田は裕にも抱きついてきた。

「わたしも参加していい?」
「吹奏楽部は大丈夫なの?」
「掛け持ちになるかもしれないけど兄貴とかの影響で映画結構見たりするし好きなんだよね」
「掛け持ちでもいいじゃん。祐希ちゃん参加決定。」

土田のテンションは高い。

「抱きつくなよ」

長原が土田が行動を起こす前に止めた。それにはさすがの土田も笑って

「さすがにやりませんよ。ぶっとばされたくねぇし」
「そんなに凶暴じゃありません!」

西山がムキになって否定する。裕は笑いながら見ていた。

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