最後の春
入り口の上には「化学準備室」のプレートがつけられており外から見た限り本間がいるかどうかはわからない。

「失礼しまーす」

ドアを開けると本間は本を読んでいた。机の上にはフラスコをつかってコーヒーまで淹れてある。

「これは珍しいメンツだな。」

本間は裕たちを見ると読んでいた本を机に置く本には『淀川傑作集』と書かれている。

「今日は先生に相談がありまして」

裕が話を切り出そうとすると

「補習は受け付けてないぞ」

本間が先制攻撃をする。

「いやいや、お蔭様で補習は受けずにすみそうです。今日は先生に顧問になっていただきたくてお願いに来ました。」
「顧問?科学部ならもうあるし、俺は顧問じゃないし面倒なのは嫌いだ」

本間はそういうとコーヒーを飲んだ。ビーカーで飲んでいる姿を見て裕はホントに大丈夫かなと思った。でも、ここで断られたらまた1から探さなくてはいけない。

「このメンツで科学部は無いです。同好会を設立したいんですが顧問になって欲しいと思いまして来ました」
「同好会?お前と長原が絡んでいるということはくだらないやつだろ?」
「くだらないかどうかは先生自身で判断してください。でも、先生に顧問になってくれたらどんなに心強いか…」

こうなったら裕も必死だ。本間の自尊心を煽ってみようと思いヨイショをする。土田は後ろで笑いをこらえるのに必死だ。

「口がうまいなお前は」

本間は笑うと

「何の同好会なんだ?」

と少し食いついてきた。効果が少しあったみたいだと判断した裕はこのチャンスを逃してはいけないと思い
< 49 / 92 >

この作品をシェア

pagetop