最後の春
「同好会は映画同好会です。みんなで話して映画好きな先生しか顧問に相応しいのはいないと思ってきました。な?」

裕が振り返ると土田の顔を真っ赤だ。裕は顔で合図すると

「そうなんです。先生しか相応しいのはいなくて…先生に断られて他の先生が顧問になっても楽しくないと思います」

すかさず長原が後に続く。本間の顔はヨイショ効果が抜群に聞いたのか完全に崩れている。

「そうか、そこまで言ってくれると先生としても嬉しい限りだ。映画好きということをよく知ってたな」
「先生は映画好きで有名ですから知ってて当然ですよ」

完全に上手くいった。まさか数分前に初めて知ったとは本人も思わなかっただろう。裕のこの一言で本間は先ほどまでの態度と違ってやる気になってくれた。
< 50 / 92 >

この作品をシェア

pagetop