最後の春
「話を夢ヶ咲にした理由は別にもあるんだ」

西山の部屋に移動した裕たちは長原の説明を聞いていた。

「なるほど、いきなり夢ヶ咲が出てきたら何かと思ったよ」

長原の説明に西山は納得したようだった。

「でも、そこに美樹がいるとは限らないんでしょ?」

宮田が裕に聞く。

「ああ、だから今度夢ヶ咲に一度行くつもりだ」
「今度って?」
「親父が出張で行くのがGWなんだよ。でもその前に一度行ってみたいから今度の休みのときにでもと考えてるけど」

裕が答えると、

「わかった。じゃあ美樹がいるかどうかはキミの報告を待つことにして、明日の勧誘について決めておこうよ」
「該当するのは、今部活に入ってないやつで映画に興味があるやつかぁ。誰かいないかな?」

土田が聞いてきたが裕には思いつく人はいない。

「出来るだけ探してみるさ。色々なやつに声をかけてみれば良い奴が見つかるかもしれないし、あとは掲示板に貼ってみるのも良いかもしれないな。今は新入生の部活見学があるから」

新入生は1週間の部活見学期間が設けられている。この時期は各部活も掲示板に貼ったりしてPRする。まだ正式に決まってないが本間にお願いすればもしかしたら同好会もPRできるかもしれない。

「じゃあ、先にポスターとか作ったほうが良いかもね。キミ何か良い文無い?」

宮田に聞かれた裕は

「まず、こういう同好会だと説明して、出来たばかりだから体育会系みたいに先輩・後輩は無いということを書けばいいんじゃないかな?」
「なるほど、じゃあ掲示板は私が作っておくから、キミ達は本間先生に許可を取って」

宮田はそういうと、ノートに簡単な構成を書いていった。手際のよさに裕は眺めることしか出来なかった。
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