最後の春
「何か色々進んで楽しくなってきたな」

西山の家を出た土田が裕に言った。

「そうだな。これからもっと楽しくなればいいな」

裕も同じ気持ちだった。すると、隣を歩いていた宮田は

「キミとなら楽しく過ごせそうだよ」

と言った。時間はもう夕方を過ぎていた。街は帰宅する人、買い物客などで相変わらず混雑していて後ろのほうから夕日がすべてを赤く染めている。

「そのためには宮田さんの力も必要だよ」

裕は宮田の顔を見て言った。宮田の顔は西日に照らされ良く見えなかったが笑っているのだけは解った。

「キミは面白いね」

宮田はそう答えると、先に帰っていった。

「面白いか?」

宮田を見送り裕が長原に聞いた。

「面白いからずっといるけどな俺は」
「泉ちゃんといれば何かあるかもしれないし」

長原・土田が答える。裕はよくわかんなかったが面白いなら別にいいやと思った。

「ちょっと用事があるから行くわ」
「用事?」

土田が切り出したので裕は聞くと

「俺にも用事はあるのだよ泉ちゃん」

と言い、土田は笑った。
< 56 / 92 >

この作品をシェア

pagetop