最後の春
「そろそろ、宮田たちが来るころだろう」

駅にある時計を眺めた長原は裕に告げた。ただ待っているだけなのに時間がたつのが早く感じた。駅についてからもう20分が経過している。するとバスターミナルの方から誰かが叫んでいるよう声が聞こえた。声のするほうを見ると宮田が手を振りながら走ってきている。

「おい、あいつの高すぎるテンションは何だ?」

予想だにしない光景に長原すら動揺している。

「泉ちゃん対応よろしく。俺ああいうのパス」

さすがの土田も逃げ腰だ。裕は思い切って

「おーい!」

宮田に届くぐらい大きい声で呼び手を振った。周りからの視線が痛い。でも、裕は気にすることはなかった。

「さすがだね」

裕たちのところに着いた宮田は機嫌がよかった。

「まさかその行動をするとは思わなかったよ」

長原は笑っている。

「そう?私はキミならしてくれると思ってたけどな」

宮田は笑っている。裕は先ほどまでの寂しい気持ちがどこかに消え去っていったことが自分でもわかった
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