最後の春
「海の匂いだぁ!」

夢ヶ咲に到着し改札を抜けると土田は大きい声で叫んだ。

「さて、まずどうしますかねぇ?」
「うーん、少し歩いてみて人に聞いてみようか?」

土田に聞かれた裕は持ってきた縁日の広告を眺めて言った。まずは縁日の手がかりを掴まないと長野にたどり着くことなんかできるはずがない。

「そうだな。商店街とか人がいそうな所を目指してみますか」

長原も裕の案に乗った。夢ヶ咲は海に直面していることもあって、夏になると混雑することは裕も知っていたが今の時期は観光客は少ないみたいだ。所々サーフショップや水着を販売している店は見つけることはできたが知ってそうな人を見つけることは出来ない。

「っていうか商店街見つかんないんですけど」

土田は早くも疲労が混じった声を出し始めた。駅を出てからどれぐらい歩いただろうか?犬の散歩をしている人などは見つけることは出来たが聞いてみたところ縁日について知っている人はいなかった。

「泉ちゃん少し休憩しない?腹減ったよ」

裕は時計を見たが11時を少し回っている。そう言われると裕も朝は昌子と話したせいか余り食べていないのでお腹がすいてきた。

「そうだな。すこし休憩しよう。どこか休めるところあるかな?」

5分ほど歩くと「軽食」と書かれたのぼりが立っている店を見つけることが出来た。

「ここでいいんじゃね?」

土田はそう言うと、先頭を切って店内に入った。裕たちも続くことにした。
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