最後の春
「気づいてた?」

しばらくしてから長野が裕に言った。

「車椅子をしていると言うことだけで周りの人は自分より下に見てしまうの、車椅子だから可愛そうとかね。もちろん、車椅子の事なんか当事者や家族・介護関係者の人とかじゃないと認識がまだまだ不足しているけど。中には、スロープを押して手伝ってくれたりしてくれる人もいるけど、バスに乗るときや駅のエスカレーターで時間が掛かってしまったりして健常者の人から文句を言われたりするのが現状なの。」
「そんな人がいるのか…」
「でもね、私たちは普通にして欲しいの。他の健常者の人と同じぐらいにね。それが一番難しいことも知ってるけど」
「気づかなくてごめんな」

裕は長野に謝った。普段の生活の中で当事者にならない限り車椅子について深く考えることは正直無いに等しいだろう。長野が望んでいること、普通の人・一人の何処にでもいる高校生として見ることを裕ができていたかと思うと出来ていなかった。やはり心の中で車椅子をしている長野のことを別格として見てしまっていると気づいた。裕は気づいたら涙を流していた。

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