最後の春
「あっどうも」

本屋に着いた裕は店頭で立ち読みしていた人に声を掛けられた。突然のことに誰かわからなかった裕は黙ってその人を見つめていた。どこかで見たことあるが思い出せない。すると、その人はわかってくれないことに気づいたのか

「いらっしゃいませ~モッツァにようこそ」
「佐藤さん!?」
「ようやくわかった」

声を掛けてきたのはモッツァで時折映画の話しをする佐藤さんだった。

「気づくの遅いよ~」
「ごめんごめん」
「店以外で会うの初めてだよね」
「だから気づかなかったという理由にしていい?」
「アハハ」

佐藤さんは笑いながら裕の肩を叩いた。モッツァとは違い佐藤さんは明るい。

「泉くんこのあと暇?」
「特に予定はないですけど」「じゃあちょっと行こう!」
佐藤さんはそう言うと裕の先を歩いて行った。裕も後をついて行った。外を出ると雨はやんでいた。
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