最後の春

どれぐらい話していたのだろうかサンフェスタには時計が見当たらないので知ることが出来ない。爺さんは新聞から違う雑誌を読み始めていた。すると佐藤さんは爺さんに

｢今日はお孫さん来るんですか？｣
｢もう来る頃だ｣

爺さんは雑誌を閉じ、無愛想に答えるとまた雑誌を開いた。

｢お孫さん？｣
｢そう、此処でアルバイトをしているの。泉くんの後輩だと思うけど｣
｢矢ヶ崎生なんですか？｣
｢そう、しかもね…｣

佐藤さんの言葉を遮るように扉が開いた。そこには裕よりか身長が高い男と小さい女が入って来た。二人とも矢ヶ崎の制服を着ているので、どちらかが佐藤さんの言っているお孫さんなのだろう。裕たちと目が合った男は軽く会釈すると奥に入って行った。と、するとこっちが孫だという事になる。

｢アイツですか？｣
｢ん～半分正解｣

佐藤さんは軽く笑っている。半分正解？どういう事だ？奥では男が買って来たのだろう備品を整理している。女の方はというと入り口から動かず、裕の顔を見ている。裕と目が合うと女は真っすぐ近づいてきた。

｢もしかして泉先輩？｣
｢え！？｣
｢あ、ごめんなさい。こっちが勝手に知ってるだけです｣
｢はぁ！？｣