かえりみち。
それから卒業まで、
一言も話さなかった。

あたしは別に好きな人が
出来たし、
その人と付き合った。

すぐ別れたけど、
優を引きずってるわけでは
なかった。




でも卒業式が近付くにつれ、
夏の思い出が蘇る。



「あたし…優といたときが
1番楽しかったなー」
友達の響子と帰ったとき、
ふとつぶやいた。

「今まで15年間生きてきて、
優のことが1番好きだった!」

上を向いて叫んだ。


「言わないの?」
響子は不思議そうに言った。

「でも……」
あたしは下を向く。
「でも、1度も好きって
言ってないんだよね?」
「言ってないけど、
別に今好きなわけじゃないし」
「それでいいの?」
響子はちょっと怒ったように
言った。


「…今更でしょ」


そう言ったあたしの顔は、
どんな表情をしてたかな。


哀しさに溢れてたかな。




結局そのまま卒業し、
優に会うことはなくなった。
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