かえりみち。


「彼氏…欲しいです」


プリントを提出したあと、
教室に戻る途中で
あたしはつぶやいた。


「江口君はどうしたの?」
香苗は携帯をいじりながら
聞いた。


江口君はあたしの
片想いのお相手。

何考えてるかわかんなくて
女子が少し苦手そうで
でも優しくておもしろくて
良い人(だと思う)



「若葉のこと好きって
噂結構あったのに。
やめたの?」
「やめたとかじゃないけど…」
あたしは口ごもる。


「前は結構仲良かったけど、
好きって意識し出したら
ほとんど喋れなく
なっちゃったし。
そーゆーのやだし」
「中学生かお前は」
「いや、中学のときのほうが
あたしは積極的だった!」
香苗の肩をつかみ、
教室前の廊下で
大声で叫んだ。

「社長婦人?」
あたしの手をゆっくり
はずしながら、静かに言った。
「店長婦人だってば!」


わかったわかった、
言いながら香苗は
教室に入って行った。
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