優しい気持ち
「なぁ、この仕事やりだしてどれぐらいなの?」

「ん?一年ぐらいだよ。」

私が体を流している間もその人との会話は続いた。

「何歳?」

「十九だけど。」

「大学生?」

「違うよー。」

「あ、そうなの?てっきり学生だと思ってた。」

「学生だったらこんな仕事しないよ。」

「そうかな?この時期の学生って休みやし、結構こういうのやってる子もいるよ。」

「えっ!?そうなんだ。知らなかった。」

「こうやって話してると、普通の十九歳の女の子に見えるんだけどね。」

「・・・。」

その言葉の後、体を洗っていた手をとめ、しばらくうつむいていた。私だって普通になれるなら、普通になりたい。

「どしたん?」

「ううん。なんでもない。」

「そう?ならいいけど。」

「・・・。」

「ここまだ泡ついとるで。」

首の後ろ側を指差して、教えてくれるその人。今日会ったばかりなのに、色んな部分を見られている気がする。私はその人に小さい笑みで返答した。

「なぁ、早くでようよ。」

「先に出てていいよ。」

その人と話をしていると、仕事を忘れそうになる。だから少し一人になりたくて、そう応えた。

いつもなら客はさっさとシャワールームを出て、ベッドでタバコをプカプカとふかしながら待っている。そんな客ばかりと接してきたせいか、少しやりにくさを感じていた。
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