優しい気持ち
第四章 あの日
当時私には好きな先輩がいた。
特別かっこいいわけでもなく、人気があるわけでもなく、どちらかと言えば、女の子からは受けない、ひょろっとしたカンジの人だった。
接点といえば帰りのバスが一緒なことぐらいで、私はこの人のバスの中で小説を読んでいる姿が好きだった。
バス停でたまに視線が合うこともあったが、それだけだった。私だけが勝手に意識していた。それだけだった。
ある日、ハンド部の練習を終え、いつものようにバス停に向かった。私が通っていた高校は進学校だったため、三年生は六時間の授業の後、課外授業を強制的に受けることになっていた。私が好きになったこの人も三年生だったので、いつも私が部活を終える時間と一緒だった。
いつものようにバスに乗り、彼は前の方に、私は後ろの長い座席の方に腰を下ろす。名前は知らなかったが、いつも彼が降りる停留所は私のより二つ前だった。田舎の方で二つといえば距離にして三キロぐらいだろう。
だが、この日はいつもと違っていた。
彼はいつも降りる停留所に着いてもバスを降りなかった。一つ先の停留所でも降りなかった。
不思議に思ってよく見てみると、寝ている様子だった。私も部活の疲れから、自分の停留所を寝過ごすことは時々あった。一つでも寝過ごすと、上り方向へのバスを待ったりするだけで、結構時間がとられる。
そして三分後、私の停留所に着いた。
私はこのままだと最終停留所までいってしまうと思い、降り際に彼を起こしてあげた。
「あ、・・・ありがとう。」
「いえ。」
どうやら彼も私と同じ停留所で降りることができたようだ。
時刻は二十時ちょっと前。辺りには街灯も少なく、たまに走ってくる車のライトが夜道を照らす程度。
「君ってうちの高校だよね?二年生?」
「はい。」
特別かっこいいわけでもなく、人気があるわけでもなく、どちらかと言えば、女の子からは受けない、ひょろっとしたカンジの人だった。
接点といえば帰りのバスが一緒なことぐらいで、私はこの人のバスの中で小説を読んでいる姿が好きだった。
バス停でたまに視線が合うこともあったが、それだけだった。私だけが勝手に意識していた。それだけだった。
ある日、ハンド部の練習を終え、いつものようにバス停に向かった。私が通っていた高校は進学校だったため、三年生は六時間の授業の後、課外授業を強制的に受けることになっていた。私が好きになったこの人も三年生だったので、いつも私が部活を終える時間と一緒だった。
いつものようにバスに乗り、彼は前の方に、私は後ろの長い座席の方に腰を下ろす。名前は知らなかったが、いつも彼が降りる停留所は私のより二つ前だった。田舎の方で二つといえば距離にして三キロぐらいだろう。
だが、この日はいつもと違っていた。
彼はいつも降りる停留所に着いてもバスを降りなかった。一つ先の停留所でも降りなかった。
不思議に思ってよく見てみると、寝ている様子だった。私も部活の疲れから、自分の停留所を寝過ごすことは時々あった。一つでも寝過ごすと、上り方向へのバスを待ったりするだけで、結構時間がとられる。
そして三分後、私の停留所に着いた。
私はこのままだと最終停留所までいってしまうと思い、降り際に彼を起こしてあげた。
「あ、・・・ありがとう。」
「いえ。」
どうやら彼も私と同じ停留所で降りることができたようだ。
時刻は二十時ちょっと前。辺りには街灯も少なく、たまに走ってくる車のライトが夜道を照らす程度。
「君ってうちの高校だよね?二年生?」
「はい。」