優しい気持ち
その日の夜の食卓、父が例年のように話を切り出した。

「明日は花火大会だ!みんなで行こうな!母さん、明日はビールが飲めるぞー!」

「そうね!久しぶりに飲もうかね!」

母が話をつなぐ。

「優子、おまえも明日は行くだろう?」

「私、明日友達と行くから。」

三つ上の姉が話を遮る。

「なんだ、なんだ!?家族の集まりより友達かぁ?」

「別にいいじゃない!私もう二十歳なんだから、もうほっといてよ!」

「・・・。」

姉の勢いに黙り込む父。
しばらくの間、食卓の間がしーんと静まりかえった。

私も実は行けないのだ・・・。

なんて、この静まり返った状況の中、なかなか話を切り出せるわけない。

「ごちそうさま。」

姉はその場を離れ、部屋に行った。少し、緊迫感が薄れた。私はタイミングを窺いながら、二人をちらちら見ていた。

「友子は明日いくでしょ?」

母の言葉にすかさず、話を切り出す。

「私も実は・・・。」

「何?友子も友達と行くの?」

「友達じゃないけど・・・学校の先輩と。」

「全く、お前らは家族の集まりをなんだと思ってるんだ。」

「・・・。」

私は姉のように反発せず、沈黙を保っていた。ご飯を食べながら、夕方のテレビのニュースを見る。ちょうど天気予報の時間だ。

《それでは県内の明日の天気です。明日の岩手県内の降水確率は、盛岡三十パーセント、宮古四十パーセント、大船渡三十パーセントとなっています。》

「あら、明日三十パーセントだって。お父さん、大丈夫かね。」

「母さん、心配し過ぎだって。七十は晴れなんだろ。大丈夫だよ。」

「・・・。」

私は母譲りの性格なのか、三十パーセントでも雨が降るかどうか心配になっていた。

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