止まった時の住人
健は男に近づき、ゆっくりと声を掛けた。


「健。待っていた。ここではなんだから、どこか喫茶店に入ろうか」


男は身長175センチぐらいで健より少し高く、がっちりとした体型で、年は22歳ぐらいに見えた。


格好はセーターにジーパンとごく普通だったが、男は驚くほど無表情だった。


近くの喫茶店に入ると、二人は人気の少ない席に座った。


「……そんなに警戒するな。私が誘拐をした理由は一つ。健、お前にこの件のことに気づいてほしかったからだ。こうするしかなかった」


「あんた……一体何者やねん?なんで俺の名前を知ってるんや?」


健は恐る恐る聞いた。


「健。いろいろ聞きたいことがあると思う。だがまず、私の話を聞いてくれ」


犯人はそう言うと、健は頷いた。


「まず単刀直入に言う。この件の犯人は……竜二だ。そして、竜二の持つ時計を奪えばループは終了するはずだ」


健はその言葉の意味がわからなかった。


竜二が犯人?そんなことあるわけがない。


「あんた……名前は?」
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