止まった時の住人
「多くの人がいれば悪知恵を働かせる者もいるし、裏切る者やスパイが現れる。私は一度、それで失敗している」


「一度失敗したって……他の人にも何人か時計触らせたん?その人たちは何してるん?」


「消された」


「消された?」


「今、この世は時間がループしている。だからたとえ死んでも、また29日からやり直すことができる。だが……消されるとどうにもならない。今のこの世の「死」を意味する。その者の存在自体を末梢する。時計を持つ者だけができる、神の技だ。『聖の光』という。この光を受けると、消滅する」


「そんなことが現実にできるん?っちゅーか俺が今時計持ってるぞ?」


「時計は世の中に二つある。一つは神の時計。もう一つは女神の時計。おそらく……いや確実に、お前が持っているのは女神の時計だ。神の時計を持つ者にしか、聖の光はできない。時計はどうやって手に入れたのだ?」


「いや……庭に落ちてた」


「……やはり、竜二は楽しんでいる。その時計は、竜二がわざと落としたものだろう。この時間のループの暇つぶしに、お前は選ばれたのだ」
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