止まった時の住人
「なぁ、さっきから竜二が犯人って言うてるけど、証拠でもあるんか?」


「……証拠はない。だが、いずれわかる。お前が必要だ。竜二が犯人だとわかったときは、私に連絡してくれ」


そう言って弘満は、番号を書いた紙切れをそっと差し出した。


「どうしても私の言うことが信用できないなら……この話は忘れてくれ」


「なぁ……なんで俺が必要なんや?」


「神の時計は、持ち主に神の力を与える。普通の人間は神の時計を持つと、超人になる。見た目は何もかわらないが、たった一発の拳で岩石を砕き、銃弾を受けても傷一つつかない力をもつ。……時計を奪えることさえできれば、解決する」


黙って浩満の話を聞く健。


「奪うためには、相手を倒さないといけない。そのために俺は何度も戦った。だが勝つことができない。傷一つ負わせることもできない」


「夜中に襲ったら?」


「神の時計を持つ者は人間の持つ三大欲求も無くなる……つまり、寝たり食事したりしなくてよくなる。だから、時計を奪う隙もない」
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