止まった時の住人
しかし線路に車体がひっかかって、うまく移ることができない。


そうしている間にも電車は凄いスピードで健にせまり、目の前まで来ていた。


ぶつかる!


思わず健は目を閉じた。


そのとき、女の人の声が聞こえた。


「左に曲がりなさい!」


その声で反射的に、健はハンドルを左に切った。


ファーン!と、電車は車のすぐ横を紙一重で通り過ぎた。


車は丁度遮断機を突き破り、道路で止まった。


「あ……危なぁー……」


健は思わず安堵の息をもらした。


ハンドルを握った手には汗が流れた。


「それにしても、なんで電車が……」


健は振り返ると、電車の姿はそこにはなかった。


「あれ?どうなってるねん……あ、そういえばさっきの声は誰や?!」


そう思ったとき、助手席のドアが開いた。


「うわ!」


健は思わず両手で頭を抑え、身を低くした。


「健君、久しぶり」


そこには、雪江が立っていた。
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