止まった時の住人
ネマキのまま、ドラムのスティックを乱暴に掴んで部屋から飛び出した。


ガン!


「痛!」


部屋のドアの角で足の小指をぶつけた。


「やばい、やばい、落ち着こう……はい、落ち着いた!おっしゃ、ダッシュや!」


階段を駆け降りて、玄関のドアを開けた。


ガン!


「痛っ!」


今度は玄関のドアの角で、同じ小指を打った。健はぴょンぴょンと飛び上がりながら、ぶつけた小指をさすった。


「なんちゅー日やねん……」







12時15分。


「ハァ、ハァ、ハァ…着いた…」


猛スピードで自転車をこいだ甲斐があって、なんとか10分程で着くことが出来た。


スタジオの透明ガラスのドアを開けると、微かに激しい音が聞こえてきた。メンバーがすでに練習しているようだ。


スタジオの中は、入ってすぐロビー、そしてロビーの奥に練習スタジオA、Bの二つの部屋がある。
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