止まった時の住人
無表情で言うと、どこからか時計を出した。


「僕の持ってる、これが本物の時の時計。健……弘満が持ってた時計には、フタがついてたやろ。それが偽物や……時間を進めることしかできへん。時の時計さえあれば、そんな偽物作るのはワケない」


「お前……本気で言うてるんか?俺はなぁ、お前をずっと信用してたんやぞ!」


「……ちょっとあの日の話をしよか。僕はあの日、前から気になっていた女の子と遊んでたんや。背の低い、優しくて可愛い女の子やった。少し遠くて、H駅まで映画を見に行って、帰りに骨董品屋に寄ったんや。そこで三つの時計に出会った。これは買わなあかん。そんな気がした。でもどの時計にしたらいいかが全然決まらん。そんな時、彼女が言うたんや。バンドでお揃いの時計って言うのも悪くないね、って。三つとも買ったよ。武とお前に一つずつあげるために」


「お前……」
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