止まった時の住人
「おい伸也、お前さっきから無茶苦茶言い過ぎじゃ!」


「無茶苦茶やない!わからんのか?健、お前は健やないんや……」


「どういう意味やねん?」


「……お前は、ループの中の健や。……ループって言うのはな、架空の存在なんや。つまり、もう一人の健。お前は架空の存在や……」


「は?!そんなん信じれるわけないやろボケ!」


「……お前、T駅からここまで来たんやろ?やったら見たはずや……ライブハウス通ったやろ!入ったやろ!見たやろ!もう一人の自分を!お前は存在するべき者やないんや!」


伸也が叫ぶと、健はゆっくり口を開いた。


「もう一人の俺……確かに見たよ。でも、あそこには、竜二もおった。消えたはずの竜二がおる……どういうことや?」


伸也は黙りこんだ。


「伸也……違うやろ?本間はわかってるやろ……俺は……この俺は、存在してる。今ライブハウスにおる俺、消えた竜二、そして、死んだお前……止まった時の住人、つまり今この世界の止まった人間こそが、もう存在してはいけないものやろ!過去のことや!一度終わったことなんてもう戻れへんのや!死んだお前が生きてるのがおかしいと思わんのか!目ぇ覚ませ伸也!」
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