止まった時の住人
「……結果的には、そういう形になってもうたな……健、実は、わかってたよ。僕はもう、この世に存在せぇへんものやって。でも、それを認めるのが怖かった……」


「伸也……」


一瞬、伸也の瞳はいつもの伸也に戻っていたが、すぐにまた冷酷な目に戻った。


「……でも、神様は実在した。今日、またあの時の声が聞こえたんや」


「あの時?」


「うん。僕がひかれた時や。力が欲しいか?って。そのときと同じ声が、今日聞こえた。今度は、『健を殺せ。そうすればお前をもう一度生き返らせてやる』ってな。なんでお前を殺したらええかはわからんけど……僕はまた……頷いた」


「?!」


「僕は、お前を殺してもう一回人生をやり直す!」


「アホかボケ!自分のために俺を殺すんか!お前は間違ってるぞ!」


「わかってる……でも、どうしても生きたいんや……死ぬのが怖いんや!」


伸也はそう言うと、いつもの伸也の瞳に戻り、泣きながら引き金を引いた。
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