止まった時の住人
「穴に落とすまでは素晴らしいけど、落としてからフタするのが遅いねん……その間に僕、穴から出れちゃったよ……」


伸也は拳銃を取り出すと、銃口を雪江の腹部に押し付けた。


「うっ……」


雪江は足がガクガクした。


「大丈夫、雪江さんは殺さんよ。ちょっと寝ててもらうだけや。僕が殺さなあかんのは、健だけや……」


パン!


伸也が指を引くと同時に銃声が響き、弾は雪江の腹部を貫いた。


雪江はその場に倒れ、気絶してしまった。


「さて、次は健の番やな……あれ?」


伸也は健が倒れていた場所に目を向けた。


……が、そこに健はいなかった。


「……どこ行った?」


伸也はキョロキョロと辺りを見渡した。


「くらえ伸也!」


カウンターの隅に隠れていた健は、伸也めがけて女神の時計を力いっぱい投げた。


時計は見事に伸也に命中した。


バチバチバチバチ!


時計は目が痛くなるほどの光を放つと、けたたましい音が鳴り響いた。


「うわあぁぁ!」
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