止まった時の住人
「今日来てくれたんや、ありがとう!」


智也に続いてベースの大基が言う。


大基はこのバンドのリーダーで、冷静沈着だ。茶色のメガネをかけていて、肌の色が白く、一見病弱体質に見えるほど、とても細い。


「おぉー智也、大基、久しぶりやなぁ!まぁ、これ食うてや」


健は差し入れを渡した。


「お、まんじゅうやんけ!ありがとう!」


「お前、まんじゅうて……」


竜二は肩を落として言った。


「何や、いらんのやったら、食うな」


「アホ、いらん言うてないわ!いただきまーす」


「あれっ、康太は?」


竜二の横のイスに座りながら健が言う。


「あ、トイレちゃうか?」


智也が答えた。康太とはギター担当で、顔も体格も良くて、女の子にとても弱い。


「まぁ、もうちょい待っといたら帰って来るんちゃうか?」


「おう、まぁ待っとくわ」


「あ、そう言えば健のバンド、最近どうやねん?」


大基が聞く。
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