止まった時の住人
そう思いながら、なんとなく机の引き出しを開けた。


そのときだった。全身の毛が逆立つような寒気がしたのは……





……何で、ここにあるんや。





これは、時間が戻る前に拾ったはずや。


ここにあるはずがない。


引き出しの中に、手のひらサイズの金色の丸い時計があった。


「う……うわぁぁぁ!」


ようやく声を出すことができた健は、ドスンと大きな尻もちをついた。


「健ー?どないしたん?」


その音に、智子が一階から呼び掛けた。


「な、何でもない!ちょっと転んだだけや!」


「ふーん。うるさいから、静かにしてちょ」


「わかった、ごめん」
< 57 / 208 >

この作品をシェア

pagetop