止まった時の住人
戸惑いを隠すが、確実に声は震え上がっていた。


何や、これは。おそるおそる時計を手に取った。


やはり何の変哲もない、ただの壊れた時計だ。


おかしいのは、時間が戻る前に拾ったはずの時計がここにあると言うことだ。


……もしかして、この時計と今回の事件は何か関係があるんか?


何にしても、この時計は意味がある……。


時計は、絶対時間が戻る前に拾ったはずや!


時計の針は、0時1分前を指して止まっている。


時間が戻ったのは、23時、59分、59秒。この時計と、同じ時刻。


しかし時計はただ壊れているだけではない。


針を動かせないし、電池を入れる場所も、巻きネジもない。動かない。


つまり、これは時計ではない。時計の形をした置物と考えた方がいいかもしれない。


しかし、何か意味があるような気がする……


「もうちょっと考えてみよ……」


そう思った健は、再び時計を引き出しにしまった。







20時、16分。


待ちに待った伸也から、電話が掛かってきた。
< 58 / 208 >

この作品をシェア

pagetop