止まった時の住人
20時、17分 通話時間1分45秒


伸也も、さすがに驚いている様子だった。当たり前か……


「健ー!ご飯!」


一階から智子が呼んだ。


「ええわ!伸也来るから、来たら中入れて!」


「あいよ!」


伸也は1時間後に来た。健の部屋に来ると、こたつの前に、健と向かい合わせに座った。


「伸也、めっちゃ遅かったなぁ。何してたんや?」


「落ち着くのに時間が掛かった。冷静やないと混乱するやろ。で、解決する方法は?」


「……今のとこ、全く検討つかんわ。あ、机の中にこんな物が入ってた」


健は机から時計を取り出して、伸也に渡した。


「……何、これ?」


「時間が戻る前の29日、拾った」


「え?」


「つまり、何もかもが戻ってるはずの世の中に、その時計だけが元に戻ってない」


「見間違えやろ?」


「違う。その時計は印象深いねん。何やっても動かへん時計。絶対時間が戻る前に拾ったやつや」
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