止まった時の住人
10時。


健は家を出発した。時計屋はここから一駅の所にあるので、健は自転車で行くことにした。


家を出て左に真っ直ぐ行くと、ものの15分程で時計屋が見えてきた。


結構古い建物で、うさんくさい雰囲気が漂っていた。


茶色のドアを開けると、ギィィっと音がした。いかにも古そうだ。


時計屋の中は意外と綺麗で、いろいろ な種類の時計が置いてあった。


入ってすぐ左の銀の時計がやたらとキラキラしていて、変に目に付いた。テレビのリモコン型の時計もあった。一体、何に使うのだろうか……。



真っ直ぐ進むと、時計屋の店主が双眼鏡を覗いて何やら作業をしていた。店主は白髪で軍手をしていて、年は70を越えているように見えた。


「すいません」


健は店主に呼び掛けた。が、聞こえていないのか、店主は健に見向きもしなかった。


「すいませーん!」


今度は少し大きな声で呼び掛けてみた。すると、返事があった。
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