止まった時の住人
「お、いらっしゃい」


「あの、時計が動かないんです」


「ん?どの時計?」


「これなんですけど……」


健はポケットから金の時計を取り出し、店主に渡した。店主は時計を受けとると、持っていた双眼鏡で時計を見た。


「うーん……これは、本当に時計かね?」


店主は困った顔で健に問いかけた。


「たぶん……」


健は曖昧に答えた。


「たぶん?」


「実はそれ、僕の家の庭で拾った物なんです」


「ふーむ……これは時計じゃないと思うよ。電池もなければ、巻きネジもない。ただの置物じゃよ」


「あ、そうですか……」


「でも、変な置物だね。電池さえあれば今にも動き出しそうな置物じゃよ。ちょっとこの時計、開けてみてもいいかね?」


「あ、どうぞ」


「……」


「店主さん?どうしましたか?」


「どこから開けるかわからん……やっぱりただの置物みたいじゃよ」
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