止まった時の住人
「そうですか……」


「この時計、もういらんかね?」


「あ、はい。何でですか?」


「いや、妙に気になってね……。壊してもいいかね?どうしても中が見たいんじゃ」


「いいですよ。どうぞ」


「じゃ、早速……」


店主は引き出しから金づちを取り出すと、頭上に大きく振りかぶった。


「あ、やっぱり壊さんといて!」


健は叫んだ。よく考えると、手掛かりは今のところこの時計だけなのだ。壊されてはまずい。だが、少し遅かった。


ガン!


金づちはすでに、時計をとらえていた。


「あーあ、お前さん、言うのが遅いよ………え?」


「……店主さん?どないしたんですか?」


「おい……、時計を見てみるんじゃ」


店主にそう言われて、健は時計を見た。


「……あれ?」


確かに金づちは時計に当たったはずだ。しかし時計は壊れるどころか、傷一つ付いていなかった。
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