止まった時の住人
「なんだね……これは……」


店主はもう一度金づちを振りかぶった。そしてさっきより強く時計に振り下ろした。


ガン!


……しかし、時計は何事もなかったかのように、傷一つ付いていなかった。


「……」


沈黙が走った。





やっぱり……この時計は、おかしい。





「店主さん、ありがとうございました……」


そう言って健は時計を素早く取り、店を出ようとした。


「待ってくれお前さん!その時計、わしに譲ってくれんか。もういらないのじゃろ。気になるのじゃ。もう少し調べさせてくれ」


「あ……でも、友達の落し物かもしれないし……また持ってきます」


「あぁ、待ってるぞ」
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