止まった時の住人
健は店のドアを開けて外に出た。足は完全に震えていた。


「何やこれ……おかしいやんけ……」


全身に鳥肌が立つのを感じた。


急いで家に帰ると、自分の部屋に戻って机の上に時計を置いて、健は机のイスに座った。


「何や、これ……」


とりあえず、伸也に報告することにした。健は携帯電話を手に取ると、伸也の番号を震えながら押した。


プルルルル、プルルルル……


ガチャッ


「もしもし、健?何や?」


「伸也か?さっき、時計屋に例の時計を持っていったねん。ほんで、金づちで時計を叩いた」


「は?何しとんねん!壊してどうすんねん!」


「最後まで聞いて!時計は……傷一つ付かんかった」


「……え?」


「確かに金づちは時計に当たったのに、傷一つついてへんねん。やっぱこの時計……おかしいぞ……」


「マジか……」
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