リンゴとミカンの事情
「邪魔」


聞いたことのない低い声で言い捨てて、ミカンは教室に出て行った。


なんとか図書室に辞書を返して教室に戻ると、ミカンはいなかった。

ミカン本人どころかかばんすらない。

どこに行ったんだろうと、後ろの席に尋ねる。


「あぁ、帰ったよ」

「何でだよ?」

「さぁ?」


今日帰ることなんて聞いてなかった。今までも酷い喧嘩を何回もして来たこともある。

そんな時でもミカンは帰ることなんてなかった。
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