リンゴとミカンの事情
不意に眉間のシワを細い人差し指で触られてドキリとした。

ふわっと鼻に香る甘やかな香り。彼女の香りだと気づくと思わず身体を引いた。


「触ってんじゃねぇよ」


手を払うと、一瞬淋しげな顔をした。


「ふんだ。むっつりスケベな桜くんに触ったらこっちが妊娠しちゃうよバーカ」

「んだとテメェ」


「助けてぇ犯されちゃう〜」


校舎に向かって走って行く二人を誰もが知っていた。

自覚のない天然美少女、男勝りな不動美感(ふどうみかん)

こちらも自覚の薄い美少年、文武両道な桜凛護(さくらりんご)


二人を知らないものはこの学校にいないという程有名な幼なじみの二人だ。
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