たった一言が言えなくて


さっきってのは恐らくあの授業か。


それは褒めてるのか?貶してんの?それとも苛めてんのか?






口を抑えながら笑いを堪える佳斗。


つか、もう十分笑ってるかね。ちょっと私だって恥じらいってもんがあるぞー。




さっきだって、授業が終わるまで羞恥のあまり顔が上げられなかったんだからな。





「はははっ、」


「笑い事じゃないわぁ!」


「はいはい、わかってるからお前は早く日誌置いて来いって待ってるからさ」





と言うとニッとはにかんでムッとする私の頭を軽く叩く佳斗。

この表情、仕草にずるいと思った。コイツはこうやってやれば私の機嫌が良くなるって知ってんだから。


まぁその笑顔に惚れてるんだけど。






「んじゃあ、ゆっくりいってきまぁ」


「何でだよッ」





でも、それを今も覚えてて離れていかない佳斗と私の関係はある意味安心できるものだったりして。






私は日誌を持つと佳斗の頭を叩く微かな感覚を余韻にまた教室を後にした。



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