たった一言が言えなくて
「…………」
居たたまれない。
胸が苦しい。さっきは華乃が居たからきっと平気だったんだ。
今は1人で切り換えになりそうな事もなくて……あー、ヤバイ泣きそう。
「ッ!?」
二人の顔がやけに近い気がした。
あの表情と良い、私は見てはいけないものを見たような感覚に陥った。
例えるなら親の浮気現場を目撃したようなお父さんが実はオカマだったと言うようなそんな感覚?
いやいや、こんな程度で泣きそうになるなんて私、どうした?
視界が揺らぐ。
二人を見るのが辛い。何だこれ、今日の私は変だ。
──きっと恋に酔ってるだけ。
私は立ち上がると何もないかのように廊下に飛び出した。
それに直ぐに気付いたのか美野さんは一瞬驚いた様子で私を見て佳斗に視線を戻した。